
| 山崎屋 今月のお知らせ |
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◎今月のお休み 6(月)、7(火)、13(月)、20(月)、21(火)、27(月) ◎不連続うなぎ小説R「今までずっと、ありがとう」 全国でも指折りのうなぎ職人である長七郎が体力の限界を理由に引退を申し入れて きたのは桜の花の咲く直前のことだった。 店としてはもちろん何とかして引き留めたかったが、残念ながら本人の意思は固く、 夏を前にしたまさに今日、半世紀も握り続けた包丁を置くことになっていた。 「トメさん、このタクアンの切り口に字、書けないかなあ?」 「え〜っ、どしたの急に?」 「ほら、よく米粒に字を書くやつ、あるじゃない」 「マジックで書いたら食べられなくなっちゃうし……、そんなの無理だよお」 「なになに、長さん、今度は何考えてるの?」 「うん、妻にね、最後にうなぎを焼いてってやろうと思ってんだけどさ、面と向かっ て有難う、な〜んてこっぱずかしく言えねえだろ。だからうなぎに付けるタクア ンの断面にでも書いてやれと思ったんだけどさ……。」 確かな技術とは裏腹に考えていることのベクトルがいまいち他人とは違っていること の多い人だったが、最後の最後になっても、彼のこのちょっぴりスパイシーな感覚に は、結局誰もついて行けなかった。 閉店時間、最後のオーダーを焼き上げると店の全員が長七郎の周りに集まってきた。 すると彼はゆっくりとみんなを見てから、伝票のないうなぎを一枚、焼き始めた。 傍らのうなぎの包装紙の裏には、タクアンに書くつもりだった「50年間ありがとう」 という簡単だけど愛情のにじみ出た奥さんへのメッセージが書いてあった。 全員が見守る中、焼き上がった名人最後の蒲焼は、今まで誰も見たことのないくらい、 ふっくらと艶やかで奇跡みたいな蒲焼きだった。 ━━━━━━次回未定━━━━━━ |
